あんがい精神的にもろかった1982年当時の高校野球
朝日新聞のスポーツ欄に、1982年におこなわれた
池田高校と早稲田実業との試合がふりかえられている。
意外なのは、選手・監督とも、あんがい精神的にもろいことだ。
「もうまけた」
「かてるわけがない」
「サインもらおうかとおもった」
みたいなことをわりと口にしている。
あの蔦監督でさえ、
「荷物をまとめとけ」なんていっているのだ。
日本のトップレベルの高校でも、
相手の名前や体格で気おくれしたり、ビビったりしている。
高校野球は精神力だ、けっしてあきらめない気もちがだいじだ、
みたいなことをよくきくのに、じっさいは、あんがいそうでもないみたい。
これは、1982年という時期のもつ特殊事情だろうか。
それとも、いまの高校野球も、おなじような精神でおこなわれているのだろうか。
盆も正月もなく、いちにちに5時間も練習するようなチームが、
あんがい気もちでまけているのがおもしろい。
わるいことではないとおもう。
なにがなんでもかつんだ、おれたちがまけるわけがない、
とおもいこんでいるより、よほど健全な精神というべきだろう。
高校野球からイメージされる、ガチガチの封建的気質を敬遠してきたけれど、
かんたんに「かてるわけがない」とおもう選手たちの
やわらかい思考がうれしかった。
(吉田 淳)